一目惚れ、という言葉は本との出逢いにもある。
美しいタイトルと夜空に散りばめられた星々を一層明るい閃光の流れ星が刹那を切り取るかのように描かれた装丁に釘付けになった。
一目惚れだった。
橋本紡さんの『流れ星が消えないうちに』

この本で橋本紡さんを知り、この本をきっかけに橋本紡さんの小説を何冊か読んだ。
何度も読んでいるけど、改めて再読したので、その感想を書いていこうと思う。
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あらすじだけ聞くと、ありきたりな恋愛小説かもしれない。
小学生から一緒だった奈緒子と加地君は高校生の時、ある出来事がきっかけで恋人同士になる。
しかし、大学生になった時、加地君は事故で死んでしまう。
その後、奈緒子は加地君と仲の良い巧君と恋仲になるけども、二人の間にはいつも加地君の存在がある……。
物語は奈緒子の視点と巧君の視点で展開され、現実や回想という時空の軸を行き来する構成で創られているため、飽きることなく次々にページをめくった。
ぼくは、恋愛を題材にした小説があまり得意ではない。
僕がこれまで読んできた恋愛を題材にしている小説は無理のある設定や物語展開で描かれることが少なくなかったからだ。
ページはめくっているけれど、そんなことあるはずがないだろう、そんなにうまくいくはずがないだろうという気持ちが徐々に湧きあがり、どこかでストーリーに入りきれない自分が出てきてしまうから。
しかし、この物語は現実味を帯びている。
登場人物たちは、誰しもが経験するであろう大切な人を失うという、大きな暗闇を真っ向から受け止めて、ひどく打ちひしがれる。
そして、その状態を事態から立ち直るために葛藤し、もがく。
もがいて、足掻いて、苦しんで。時間の経過に優しく背中を押されて、怯えながらも自分の周りにまだあるものを確認するようにして、一歩を踏み出そうとする姿が描かれている。
その心情があまりにも生々しく描かれており、気が付くと物語に惹き込まれ、現実を侵食し、自分の中にしまっていたはずの悲しみに想いを馳せている。
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人間の精神や心は、繊細で弱いものだと思っている。
失恋したとき、信頼している人と価値観が合わなかったとき、
家族の関係がうまくいかなかったとき、自身の感情を見出す障害に出逢い、向き合ったときに、弱さがひょっこりと顔を出す。
そして、弱さの正体が自分にあるのだと気づいてしまう、どんどんと考え悩んでしまう。いつの間にか自分がとてもちっぽけな存在に思えて、灰色や黒色の考えが次々に頭に浮かぶ。
うまく弱さに対峙せず、向き合うことを避けて、焦って解決しようとすると”弱さ”の思うつぼだ。沼地に足を取られるように、自分の無力さを自身で証明し、言い逃れすることもできず、いとも簡単に心は壊れてしまう。
心に制御がきかなくなると、肉体を傷つけ、滅ぼそうと動き出してしまう。
人間にはそんな心がみんな一律に備わっている。
精神的に強い人だね、と周りから言われる人も弱い部分を持っている。
人に弱さを見せることができていない人が実は一番弱かったりする。
でも人間はただ弱いだけじゃない。
人間の精神・心は弱さを乗り越えることができる。
大切なことは、時間の流れに身を任せて、悩みを熟成させることだと思う。
焦ってはいけない。現代の時間の流れに惑わされてはいけない。時間をかけて、弱さを認めるために真っ向から対峙し、ぐるぐると時間をかけて迷路の中でもがくこと。
とてもつらいことだけれど、経過する時間の中でさまざまなことを知ることができる。
自分のこと、相手のこと、世界のこと。
そうすると、不思議と人はまた一歩を踏み出すことができる。
そうして、人はやさしく、強くなれる。
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奈緒子の言葉がとても素敵だった。
不幸なんて、いくらでもある。珍しくともなんともない。
けれど、ありふれているからといって、平気でやりすごせるかといえば、そんなわけはないのだ。じたばたする。泣きもする。喚きもする。
それでもいつか、やがて、ゆっくりと、私たちは現実を受け入れていく。そしてそこを土台として、次のなにかを探す。探すという行為自体が、希望となる。
この物語全体に漂っているやさしさの正体は、弱さに真っ向から立ち向かい、逃げずに悩む登場人物の姿勢から生まれていると思う。
弱さと対峙して、つらい状況にあるぼくたちを、それでいいんだよ、と肯定してくれる。
伏線の回収もきれいで、ハッとさせられる言葉がちりばめられている。
何より、いつの間にか作品が醸し出すやさしさに包まれて、そっと背中を押されている。
小説の良さを改めて教えてくれる、そんな素敵な作品なので、
ぜひ、読んでみてほしい。流れ星を探して。
